「つかこうへい正伝 1968-1982」

役者をしている大学の先輩が
「ムチャクチャおもしろかった!」と熱く語るのを見て
つかこうへい正伝 1968-1982」を読んでみました。

2年前に出版された当初は
すぐに買って読むつもりでいたのだけど
なんとなく勝手な思い入れで手が出ずらく
仕事がちょうどムチャクチャ忙しかったこともあって
読まないままにきていたのです。

その間に新田次郎文学賞、AICT演劇評論賞、
講談社ノンフィクション賞を受賞していたのですね。

初めて劇団「つかこうへい事務所」の芝居を観たのは
大学1年のとき。

サークルの先輩が
「すごくおもしろい芝居がある。ゼッタイに観た方がいいから」と
新入部員を紀伊国屋ホールに連れてってくれたのです。

そのとき観た芝居のタイトルや内容は全く覚えてないのだけど
受けた衝撃は鮮明に覚えています。

舞台の役者達の強烈な個性と、めまぐるしく展開する物語。
テレビや小説のドラマとは全く違う言葉と流れに
頭の中はグルグルしっ放し。

でも、感情はむちゃくちゃ刺激され
経験したことのないドキドキわくわくとすごい感動。
いっぺんで芝居というものと
劇団「つかこうへい事務所」のファンになりました。

その後、公演の度に観に行っていたので
いろいろ観たつもりになっていたけど
私が劇団「つかこうへい事務所」の芝居を観ていたのは
劇団が解散する直前のたった1〜2年のことだと
「つかこうへい正伝 1968-1982」を読んで知りました。

ほんの短い時間だけど
その時期は劇団「つかこうへい事務所」の公演が円熟し
最も盛り上がっていた時期でもあったようです。

紀伊国屋ホールに当日券で入り、ホールの階段にギューギュー詰めで座り
さらに入ってくる人の座る場所を空けるために
劇団の方の「せーのっ!」というかけ声とともに席を詰め
満員電車の中のような状態で観ることさえも楽しかったこと。

大学のサークルの先輩や仲間が
タバコを吸うたびに「熱海殺人事件」の最後の台詞を真似ていたこと。

すっかり忘れていた、そんな学生時代のひとコマが
この本を読みながら鮮明に蘇ったりしました。

そして当時夢中になった役者さん達の
素顔や当時の役者ぶりを
この本を通じて少しだけ知ることができたのも
しみじみと感動的。

つかこうへいさんは「蒲田行進曲」の銀ちゃんそのもの
というのも、うれしいやらおもしろいやら。

久しぶりに映画「蒲田行進曲」を無性に観たくなりました。

つかこうへい正伝1968-1982 Kindle版