「アール・デコ 高級挿絵本の世界」と仮綴じ出版

千代田区立日比谷図書文化館の特別展
「鹿島茂コレクション アール・デコの造本芸術 高級挿絵本の世界」へ
終了直前に駆け込み。

20世紀初頭のフランス、アール・デコの時代には
美しい高級挿絵本が多く産み出されたそうです。

なかでも
ジョルジュ・バルビエ
アンドレ=エドゥアール・マルティ
シャルル・マルタン
ジョルジュ・ルパップ
の4人のイラストレーターは大人気で
グラフィック・アートの世界の「アール・デコ四天王」と
呼ばれているとか。

フランス文学者・鹿島茂氏の個人コレクションの中から
その四天王のファッション・プレート
100点あまりが展示されていました。

鹿島茂コレクション アール・デコの造本芸術 高級挿絵本の世界

上はこの美術展のチラシ。
中央に印刷されているのは
ジョルジュ・バルビエ「ボヌール・デュ・ジュール」(1920年)
の一部。

アール・デコの高級挿絵本はこんな風に
イラストと活字、レイアウトが一体となって
最も効果的なデザインを作り出しているのが特徴です。

挿絵はもちろん素敵なのだけど
私がすごく惹かれたのは
この時代の本は「仮綴じ」で出版されていたという点。

買った人がそれぞれが
relieur(ルリユール)という製本・装丁を行う職人に依頼して
自分の好みに合った本格装丁(ほとんどは革装丁)を
施したのだそうです。

アンカードルモン(フランス額装)を習うようになって
フランスでは製本も額装と同様に、一般の人が楽しむ文化があり
国家資格が得られる学校もあるということは知っていました。
それが、仮綴じで売られて、買ってから装丁することだったとは。

アール・デコの挿絵本の最高傑作と言われる
「ビリチスの歌」を作った木版画家のシュミットは
たった1人で125部を3年かけて制作し
活字(フォント)まで自分で創造したのだそうです。

そしてそれを買った人は
好みに装丁したり、ページをめくって楽しむだけでなく
気に入った1ページを
額に入れて絵画のように鑑賞したりしたのだとか。

これがまさしくアンカードルモン。
思わぬところで繋がりました。

本をその内容だけでなく、見た目、デザイン、芸術として
自分の好きなように徹底的に楽しむというスタイル。
日本の装丁へのこだわりとはまた全く違うベクトルで
すごくおもしろいです。

もちろんポストカードも購入。
右下がジョルジュ・ルパップ。
それ以外はジョルジュ・バルビエです。

ジョルジュ・バルビエのカードが多く販売されていたのでこうなったけど
私はジョルジュ・ルパップもけっこう好きです。

鹿島茂コレクション アール・デコの造本芸術 高級挿絵本の世界